孫子の兵法・兵勢(へいせい)篇。
孫子は、戦争において王と将軍の能力は勝ち負けを決する重要なファクターと論じている。
しかし、兵卒一人ひとりの能力はあまり重要視していないようである。
その点が経営者など組織のトップに好まれる所以なのだろう。
戦において兵卒は将棋の駒に過ぎず勝敗は指し手の器に左右されると。
しかし多くの人は兵法書そのものに価値を見出したがるようだ。
たとえ名人が数々の勝利を収めた対局で使用した将棋の駒を所望したところで名人のように将棋が指せるようにはならないことを肝に銘じることである。
孫子曰ク、オヨソ衆(シュウ)ヲ治ムルト寡(カ)ヲ治ムルガゴトクナルハ、分数(ブンスウ)コレナリ。衆ヲ闘ワシムルコト寡ヲ闘ワシムルガゴトクナルハ、形名(ケイメイ)是コレナリ。
三軍ノ衆、必ズ敵ヲ受ケテ敗ナカラシムルベキハ、奇正コレナリ。兵ノ加ウル所、序凵iタン)ヲ以ッテ卵ニ投ズルガゴトクナルハ、虚実コレナリ。
大軍団を小部隊のように統制するには、組織編制をきちんと行わなければならない。
大軍団を小部隊のように一体となって戦わせるには、指揮系統をしっかりと確立させなければならない。
全軍を敵の出方に対応させて絶対不敗の態勢に立たせるには変幻自在な戦い方に熟達しなければならない。
石で卵を砕くように敵を撃破するには「実」をもって「虚」を撃つ、充実した戦力で敵の手薄を衝く戦法をとらなければならない。
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軍形篇の最後は「勝兵は鎰(いつ)をもって銖(しゅ)を称(はか)るがごとし」
戦争の勝敗は、
1、国土の広狭
2、資源の多寡
3、人口の多少
4、戦力の強弱
5、勝敗の帰趨(きすう・帰着するところの意)
地形は国土の広狭を決定し、国土の広狭は資源の多寡が決定される。資源の多寡が人口の多少を決定し、人口の多寡が戦力の強弱を決定するのである。
戦力の差が鎰(いつ)をもって銖(しゅ・鎰の500分の1の重さ)に対するようであれば、必ず勝つ。逆に銖をもって鎰に対するようであれば、必ず敗れる。
勝者は、満々とたたえた水を深い谷底に切って落とすように、一気に敵を圧倒する。態勢をととのえるとは、これをいうのである。
戦力差が、500対1 であれば誰が指揮しても完勝であろう。
孫子の兵法は勝利は完勝が理想で危うきは戦わず「逃げる」ことが最善とした。
もし、孫子の兵法を最良としたならば日本のアメリカとの戦火は開かれることはなかっただろう。
兵法ハ、一ニ曰(イワ)ク度(タク)、二ニ曰ク量(リョウ)、三ニ曰ク数(スウ)、四ニ曰ク称(ショウ)、五ニ曰ワク勝。地ハ度ヲ生ジ、度ハ量ヲ生ジ、量ハ数ヲ生ジ、数ハ称ヲ生ジ、称ハ勝ヲ生ズ。
故ニ、勝兵ハ鎰(イツ)ヲ以ッテ銖(シュ)ヲ称(ハカ)ルガゴトク、敗兵ハ銖ヲ以ッテ鎰ヲ称ルガゴトシ。
勝者ノ民ヲ戦ワスヤ、積水ヲ千仭(センジン)ノ谿(タニ)決スルガゴトキハ、形(ケイ)ナリ。
(おまけ)
積水化学工業株式会社の社名『積水(セキスイ)』は、この一節から引用されたものである。
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孫子・軍形篇の4は、「まず勝ちて後に戦う」
これは、奥が深い。
故ニソノ戦イ勝チテ忒(タガ)ワズ。忒(タガ)ワザルハ、ソノ措(オ)ク所必ズ勝ツ。スデニ敗ルル者ニ勝テバナリ。故ニ善ク戦ウ者ハ不敗ノ地ニ立チ、而シテ敵ノ敗ヲ失ワザルナリ。コノ故ニ勝兵ハ先ズ勝チテ、而(シカ)ル後ニ戦イヲ求メ、敗兵ハ先ズ戦イテ而ル後ニ勝チヲ求ム。善ク兵ヲ用ウル者ハ、道ヲ修メテ法ヲ保ツ。故ニヨク勝敗ノ政ヲナス。
よって、戦えば必ず勝つ。打つ手がすべて勝ちに繋がり必ず勝利する。
なぜなら、戦うまえから既に敗れている敵と戦うからである。つまり戦上手は自軍を絶対不敗の態勢におき、敵の隙は逃さずに捉えるのである。
あらかじめ勝利する態勢を整えてから戦うものが勝利を収め、戦いを始めてからあわてて勝機を掴もうとする者は敗北する。
故に、戦争指導に優れた将は、将兵をよく統率し、軍法・軍紀を貫徹して、勝敗を思いのままにできるのである。
「不敗の地に立ちて、敵の敗を失わない」
絶対に負けない態勢をひいて敵に隙ができたところを見逃さない。
「チャンスを逃すな」なのだが果敢に攻めるどころか相手のミスに引きずられて自滅することも多々あるのが現実だ。
まして何の準備もなく戦いを始めて勝機を見出すのは万にひとつの幸運をあてにするような無謀な行動だろう。
ビジネスにおいては「勝機」を「商機」におきかえればおのずと通ずるだろう。
兵法書と同様に巷には様々な「儲けるためのマニュアル」が氾濫している。
しかし、たとえ成功者が記したマニュアルであったとしても、マニュアルに書かれた方法を語り継ぐことはできても成功を受け継ぐことはできないと心しておくべきだろう。
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軍形篇・三は「勝ち易きに勝つ」
勝ヲ見ルコト衆人ノ知ル所ニ過ギザルハ、善ノ善ナル者ニアラザルナリ。戦イ勝チテ天下善(ヨ)シト曰(イ)ウモ、善ノ善ナル者ニアラザルナリ。
故ニ秋毫(シュウゴウ)ヲ挙グルモ多力トナサズ。日月ヲ見ルモ明目トナサズ。雷霆(ライテイ)を聞クモ聡耳(ソウジ)トナサズ。
古ノ所謂(イワユル)善ク戦ウ者ハ、勝チ易キニ勝ツ者ナリ。故ニ善ク戦ウ者ノ勝ツヤ、智名ナク無く、勇功ナシ。
誰にでもそれとわかるような勝ち方は、最善の勝利ではない。
戦って勝ち世間に称賛されるのも、最善の勝利などではない。
毛を一本持ち上げたからといって誰も力持ちとはいわない。太陽や月が見えるからといって誰も目が利くとはいわない。雷鳴が聞こえたからといって誰も耳がさといとはいわない。そういうことは、普通の人なら、無理なく自然にできるからである。
それと同じように、昔の戦上手は、無理なく自然に勝った。だから、勝っても、その知略は人目につかず、その勇敢さは、人から称賛されることがない。
教科書としている本書(孫子の兵法・応用自在!ライバルに勝つ知恵と戦略守屋洋・著)で紹介されているとっておきの逸話を紹介しよう。
「墨子(ぼくし)」
戦国時代、楚(そ)の王は、「技術者の元祖」「大工の神様」といわれた公輸盤(こうゆはん)が楚のために開発した新兵器、雲梯(うんてい・攻城用のはしご)を用いて宋(そう)の国を攻め取ろうとしていた。
齊(せい)でこの噂を聞きつけた墨子は、昼夜兼行で楚の都にかけつけ、公輸盤とに面会を求めた。
「義、智、仁、忠、強」を問い宋を攻めないように要請するが「楚王の承諾を得ており中止はできない。」「ならば、楚王に引きあわせてほしい」
墨子は楚王に謁見し「義」を問うて中止を訴えるが公輸盤の面子を理由に聞き入れられない。
そこで墨子は、公輸盤に机上作戦を所望し、革帯を解いて城壁に見立て、木札を兵器になぞらえて模擬攻城戦を行った。
公輸盤はくりかえし攻撃に出たが、墨子はそれをことごとく防ぎきった。
しかも墨子の防御用の木札手はまだ残っていた。
ついに、木札の尽きた公輸盤は「負け申した。しかし、私には更なる秘策が有るが、ここでは言わないでおきましょう」と開き直った。
「先刻、承知しています・だが、言わずにおきましょう」と墨子。
楚王が「どういうことか?」と墨子にたずねた。
墨子は「公輸子(こうゆし)は要するにこの私を殺せばよいと考えているのです。私さえ殺してしまえば、宋に守り手がいなくなるから、攻められるというわけです。しかし、そうは参りません。禽滑釐(きんかつり)をはじめ三百人の私の弟子がすでに私の考案した防御用の兵器をたずさえて、宋城で楚軍の攻撃を待ち構えています。私を殺したところで、宋を滅ぼすことはできません。」
そのやりとりを見ていた楚王は、宋攻撃を中止することを墨子に誓った(公輸編)
首尾よく宋の危機を救った墨子は、帰路、宋を通り過ぎた。折悪しく途中、大雨にあったので、とある里門のひさしを借りて雨宿りをしようとしたところ、門番から追い立てを食らったという。
宋の人々は、自分たちを戦火から救ってくれた大恩人の功績をまるで知らなかったのである。
「人知れず危機を救ったときには、人々はその功績に気づかない。これ見よがしに騒げば、その功績は知られるのだが・・・・・。」
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軍形篇ニ・攻防。
勝利する条件が整っていないときは、守りを固めなければならない。
逆に勝機を見出したときは、すかさず攻撃に転じなければならない。
つまり、守りを固めるのは、自軍が劣勢なときであって、攻撃に出るのは、自軍の優勢なときである。
したがって、戦上手は、守りについたときは、兵力を隠蔽して敵につけ込む隙を与えないし攻めに回ったときにはすかさず攻め立てて、敵に守りの余裕をあたえない。
かくして、自軍は無傷のまま完全な勝利を収めるのである。
勝ツベカラザルハ守ルナリ。勝ツベキハ攻ムルナリ。守ルハ則(スナワ)チ足ラザレバナリ。攻ムルハ則チ余リ有レバナリ。善(ヨ)ク守ル者ハ九地ノ下ニ蔵(カク)レ、善ク攻ムル者ハ九天ノ上ニ動ク。故ニヨク自ラ保チテ勝ヲ全ウスルナリ。
ちょっかいを出しても反撃どころか拒絶の反応すら示さないからといって
相手を見下し、長年いじめ続けてきたいじめっ子。
油断していつも通りにちょっかいを出したら、一発の拳骨が出会い頭に。。。
かくして、いじめられっこは英雄に、いじめっ子は三枚目にと、身近にもよくある話だ。
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孫子の紹介も第四篇である。
孫子の全篇は十三篇と少ないが、中身は山のように高く、海のように深い。
2千数百年の歳月を生き残ってきた孫子の奥義は怪しい光とともに輝き誰の占有も許しはしないのだろう。
軍形篇
孫子曰ク、昔ノ善(ヨ)ク戦ウ者ハ、先ズ勝ツベカラザルヲナシテ、以ッテ敵ノ勝ツベキヲ待ツ。
勝ツベカラザルハ己(オノ)レニ在(ア)ルモ、勝ツベキハ敵ニ在リ。故ニ善ク戦ウ者ハ、善ク勝ツベカラザルヲナスモ、敵ヲシテ必ズ勝ツベカラシムルコト能(アタ)ワズ。故ニ曰ク、勝ハ知ルベクシテ、ナスベカラズ、ト。
昔の戦上手は、まず自軍の体勢を固めてから、敵の崩れるのを待った。
不敗の態勢をつくれるかどうかは自軍の態勢いかんによるが、勝機を見出せるかどうかは敵の態勢いかんにかかっている。
よって、どんな戦上手でも、不敗の態勢を固めることはできるが、必勝の条件まではつくり出すことができない。
「勝利は予見できる。しかし必ず勝てるとは限らない」とは、これをいうのである。
まずは、守りを固めて敵の崩れるのを待って攻勢に出る。
これは予算にもいえることではないだろうか。
予算は作ることができるが必ずそのとおりにいくとは限らない。
企業に例えれば収入となる売上げの決定権は社外である顧客にある。
支出となる商品の購入や人の採用など支払いの決定権は社内にある。
社外に決定権のある売上げの会議を社内で行い、社内にある支出の会議を行わない企業が生き残ることはできないであろう。
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長い間更新をサボってしまった。
「継続は力なり」というけれどもっともなことと腑に落ちる。
今回は、いよいよ
「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」
孫子でもっとも有名な言葉ではないのだろうか。
故ニ勝ヲ知ルニ五アリ。以ッテ戦ウベキト戦ウベカラザルトヲ知ル者ハ勝ツ。衆寡(シュウカ)ノ用ヲ識(シ)ル者ハ勝ツ。上下欲ヲ同ジクスル者ハ勝ツ。虞(グ)ヲ以ッテ不虞ヲ待ツ者ハ勝ツ。将能ニシテ君御(ギョ)セザル者ハ勝ツ。コノ五者ハ勝ヲ知ルノ道ナリ。
故ニ曰ク、彼ヲ知リ己レヲ知レバ、百戦シテ殆(アヤ)ウカラズ。彼ヲ知ラズシテ己レヲ知レバ、一勝一負ス。彼ヲ知ラズ己レヲ知ラザレバ、戦ウゴトニ必ズ殆(アヤ)ウシ。
勝利の目算を立てるには、5つの条件がある。
1敵の戦力を検討したうえで戦うべきか否かの判断ができること。
2自軍の兵力に応じた戦いができること。
3君主と国民が心を一つに合わせていること
4万全の体勢を固め敵の不備につけこむこと。
5将軍が有能であり、君主が指揮権に干渉しないこと。
したがって、敵を知り、己を知るならば、百戦しても敗れる心配はない。
己を知って敵を知らなければ、勝率は5割である。敵を知らず、己も知らなければ、戦うたびに敗れるものだ。
これは、戦争に限らずスポーツでもビジネスでもはたまた男女間の恋愛に於いても当てはまることばだろう。
相手のことを知るよりも自分のことを知ることはとても難しい。
自分のことを客観的に見つめる時間を日常のなかに作ることが重要になってくる。
心静かに内面を見つめ穏やかな心で思考すればよもや道を誤ることは無いだろう。
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本年もどうか、お付き合いいただきますようお願い申し上げます。
お友達になっていただいた皆様には個々のブログへお邪魔するのが筋でしょうが、
この場でご挨拶させていただくご無礼をお許しください。
どうぞ、本年もよろしくお願いいたします。




















